Daito Iwasaki

全米体操選手権2026男子|世界選手権へ向けた出場者とDスコア

全米体操選手権2026の男子出場者が7月21日に発表されました。8月6〜10日フェニックス開催、10月の世界体操ロッテルダムへ向けたワールドチーム選考の場です。ネドロシクやアッシャー・ホンら注目選手をDスコアと技術の視点で分析し、日本への影響も解説します。

全米体操選手権2026男子|世界選手権へ向けた出場者とDスコア

※本記事は2026年7月22日時点の情報です。2026年7月21日、USA Gymnastics(全米体操連盟)が全米体操選手権2026の出場者リストを発表しました。大会は8月6〜10日にアリゾナ州フェニックスで開催され、10月にオランダ・ロッテルダムで行われる世界選手権への男子代表選考を兼ねます。本記事では発表された男子出場者を、このブログの軸であるDスコア(演技価値点)と技術の視点から読み解きます。

全米体操選手権2026の概要と男子出場者

全米体操選手権2026の概要と男子出場者

開催地・日程と大会の位置づけ

全米体操選手権2026(大会正式名称は Xfinity U.S. Gymnastics Championships)は、アリゾナ州フェニックスの Mortgage Matchup Center で開催されます。Gymnastics Nowによれば、シニア男子・女子とジュニアを合わせて約150名が出場資格を得ており、男子はシニア約54名・ジュニア39名が名を連ねました。USA Gymnastics は「2026-27年のシニア・ジュニア両ナショナルチームがこの大会後に決定する」と公表しています。

全米選手権は単なる国内タイトル戦ではありません。個人総合・種目別の全米王者を決めると同時に、10月の世界体操競技選手権(ロッテルダム大会)に派遣する男子ワールドチームの主要な選考資料となります。つまり夏のフェニックスは、秋のロッテルダムへ続く米国男子の登竜門です。

なお、体操競技の演技構成や難度点を手軽に確認したい場合は、Gymnastics AI — Dスコア計算アプリが便利です。FIG 2025–2028採点規則に準拠し、790以上の技データベースを搭載しています。

出場資格を得た主な男子選手

出場者リストには、パリ五輪であん馬の銅メダルを獲得したステファン・ネドロシク、パワー系のオールラウンダーであるアッシャー・ホン、2023年世界選手権個人総合銅メダルのフレデリック・リチャード、鉄棒・平行棒に強いブロディ・マローン、そして全米予選で個人総合を制したシェーン・ウィスカスらが名を連ねました。一方、ベテランのドネル・ウィッテンバーグは出場資格を得たものの、負傷により欠場を表明していると報じられています。

選手

タイプ

主な強み

ステファン・ネドロシク

種目スペシャリスト

あん馬(パリ五輪銅)

アッシャー・ホン

オールラウンダー

跳馬・つり輪・ゆか(パワー系)

フレデリック・リチャード

オールラウンダー

個人総合・鉄棒

ブロディ・マローン

オールラウンダー

鉄棒・平行棒

シェーン・ウィスカス

オールラウンダー

個人総合の安定感

世界選手権ロッテルダムへの選考レース

世界選手権ロッテルダムへの選考レース

この大会で決まるもの

全米体操選手権で決まる主なものは次のとおりです。米国は五輪・世界選手権のチーム選考で「委員会選考+データ」を組み合わせる方式をとっており、全米選手権のスコアは最重要データの一つになります。

  • 個人総合・種目別の全米王者
  • 2026-27シーズンのシニア・ジュニアナショナルチーム
  • 世界選手権ロッテルダム大会へ向けた男子代表の主要選考資料

ワールドチーム5枠の争い

世界選手権の団体戦は1チーム5名で構成され、予選ではそのうち4名が演技して上位3名の得点を採用する「5-4-3」方式が用いられます(団体戦の得点カウント方式の解説)。上位得点だけがカウントされるため、団体総合の順位を最大化するには、各種目で高いDスコアを出せる選手をどう5枠に組み合わせるかが鍵になります。米国はネドロシクのようなあん馬スペシャリストを入れるか、6種目を平均的にこなすオールラウンダーで固めるか、という「構成の最適化」を全米選手権のスコアを見て判断することになります。

採点規則のDスコアとEスコアの仕組みそのものについては、採点規則の基礎を解説した記事で詳しく整理しています。米国は歴史的にあん馬とゆかで取りこぼしが出やすい一方、跳馬・つり輪・鉄棒では世界トップクラスの難度を並べられます。全米選手権はその「穴」を誰が埋められるかを見極める場でもあり、あん馬でネドロシクを起用するか、6種目を平均的にこなすオールラウンダーで固めるかは団体総合の得点期待値に直結します。

注目選手のDスコア・技術分析

注目選手のDスコア・技術分析

ネドロシクのあん馬 — 難度と成功率のトレードオフ

ネドロシクは6月末の全米予選であん馬14.300をマークしましたが、Eスコア(実施点)が9.200と非常に高い一方、Dスコアは五輪決勝時よりも抑えた構成だったと報じられています。あん馬はロス系・シュトックリ系の旋回技やコンバイン、フロップなどを積み上げてDスコアを稼ぐ種目で、難度を上げるほど落下リスクも高まります。ネドロシクのLA2028を見据えた復帰にとって、全米選手権はどこまで難度を戻すかの試金石です。あん馬の旋回技の仕組みはロス・シュトックリを解説した記事で掘り下げています。

実際の演技構成でDスコアがどう変わるか試してみたい方には、Gymnastics AIがおすすめです。技を選んで並べるだけで、難度点・グループ加点・連続技ボーナスを自動計算できます。

アッシャー・ホンのパワー系種目

アッシャー・ホンは跳馬・つり輪・ゆかで高いDスコアを狙えるパワー型のオールラウンダーです。跳馬では2回宙返り系のツカハラやユルチェンコ系の高難度技を得意とし、着地を止めれば跳馬に設定された終末着地ボーナスも取りやすくなります。跳馬の技系統と難度の関係はユルチェンコ系とツカハラ系を比較した記事で解説しています。団体戦で跳馬・つり輪の「高Dスコア担当」を任せられる存在は、チーム構成上きわめて価値が高い選手です。

リチャードとマローンのオールラウンド力

フレデリック・リチャードは2023年世界選手権個人総合銅メダリストで、6種目を高水準でまとめる安定感と鉄棒の離れ技が武器です。ブロディ・マローンは鉄棒・平行棒で高いDスコアを持ち、故障からの復帰過程にあります。The Gymternetなど海外メディアは、この2人のオールラウンダーがチームの「3種目採用要員」として団体総合を底上げできるかに注目しています。オールラウンダーは1種目のピーク値よりも、6種目トータルでの取りこぼしの少なさが評価されます。

日本への影響と今後の展望

ロッテルダムでの団体争い

2026年世界選手権は10月17〜25日にロッテルダムのアホイ・アリーナで開催され、男子団体決勝は10月20日に予定されています。日本はすでに世界選手権代表5名を選出しており(詳細は日本代表のDスコア展望記事を参照)、米国・中国とともに団体メダル争いの一角を占めます。米国が全米選手権を経て、あん馬のネドロシクのようなスペシャリストを組み込むのか、オールラウンダー中心で固めるのかは、日本にとっても警戒すべきポイントです。

日本が警戒すべき種目

日本の強みは平行棒・鉄棒・跳馬にありますが、米国はホンの跳馬・つり輪、ネドロシクのあん馬、リチャード/マローンの鉄棒という形で各種目に高Dスコアの駒を揃えつつあります。特にあん馬は日本が取りこぼしやすい種目で、米国がスペシャリストを団体に入れてくると、予選の「5-4-3」で差がつく可能性があります。全米選手権のスコアが出そろえば、ロッテルダムでの団体力の見取り図がより鮮明になるでしょう。

もっとも、全米選手権はあくまで選考資料の一つであり、最終的なワールドチームは委員会選考も加味して決まります。個人総合王者がそのまま団体入りを保証されるわけではなく、団体総合を押し上げる「種目の穴埋め」ができるかどうかが重視される点は、日本の代表選考とも共通する考え方です。日本のファンにとっては、米国がどの5名を選び、あん馬とゆかの弱点をどう補うのかが、ロッテルダムでのメダル争いを占ううえで重要な観察ポイントになります。8月上旬のフェニックスでのスコアに注目したいところです。

まとめ

  • 全米体操選手権2026の男子出場者が7月21日に発表され、8月6〜10日にフェニックスで開催される
  • 大会は全米王者とナショナルチームを決めるとともに、10月の世界選手権ロッテルダム代表の主要選考の場となる
  • ネドロシク(あん馬)、ホン(跳馬・つり輪)、リチャード/マローン(オールラウンド)が注目で、いずれもDスコアの視点で価値が高い
  • 団体は5-4-3方式のため、各種目に高Dスコアの選手を配置する構成最適化が勝敗を分ける
  • 日本にとって米国のあん馬スペシャリスト起用は警戒材料で、全米選手権の結果が団体争いの見取り図を左右する

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岩﨑大翔
Author

岩﨑大翔 Daito Iwasaki

体操競技歴15年(全日本選手権出場)。音楽活動、AI駆動開発、体操の3つのフィールドで活動中。それぞれの専門知識と経験を活かして発信しています。

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