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鉄棒のエンドー・アドラー・マルケロフの違い|車輪系技解説

鉄棒の車輪系技を軸に、エンドー・アドラー・マルケロフの違いをFIG採点規則に基づいて解説します。in-bar技(エンドー・アドラー)と離れ技(マルケロフ)の分類、技術、難度、2025-2028年ルールの変更点まで、混同しやすい鉄棒技を体系的に整理します。

鉄棒のエンドー・アドラー・マルケロフの違い|車輪系技解説

鉄棒はダイナミックな離れ技と、流れるような車輪で観客を魅了する種目です。しかし「エンドー」「アドラー」「マルケロフ」といった技名は、名称だけでは動きを想像しにくく、しばしば混同されます。本記事では、鉄棒の車輪系技を軸に、エンドー・アドラー・マルケロフの違いを、FIG(国際体操連盟)の採点規則(Code of Points)に基づいて体系的に整理します。

鉄棒の技を理解する4つのエレメントグループ

鉄棒の技を理解する4つのエレメントグループ

鉄棒の技を正しく理解するには、まず技が「どのグループに属するか」を押さえる必要があります。エンドー・アドラー・マルケロフの違いも、この分類を知れば一気にクリアになります。

演技を構成する4つのグループ

男子鉄棒の演技は、FIGの採点規則で定められた4つのエレメントグループ(EG)から技を選んで構成します。鉄棒の技分類(Wikipedia)によれば、この4グループは「ロングハングスイング(車輪)」「フライト(離れ技)」「イン・バーおよびアドラー技」「終末技(下り技)」で構成されます。演技構成要件(CR)を満たすには、各グループから技を含めることが求められます。

グループ

内容

代表的な技

EG I

ロングハングスイング(車輪系)

後方車輪、前方車輪、クワスト、リバルコ

EG II

フライト(離れ技)

トカチェフ、コバチ、ヤーガー、マルケロフ

EG III

イン・バーおよびアドラー技

エンドー、シュタルダー、アドラー

EG IV

終末技(下り技)

伸身2回宙返り2回ひねり など

ここで重要なのは、エンドーとアドラーはEG III(イン・バー技)に属し、マルケロフはEG II(離れ技)に属するという点です。名前が似た響きでも、技の系統はまったく異なります。

車輪(ロングハングスイング)が全ての基礎

鉄棒のあらゆる技の土台になるのが「車輪」です。The Gymnastics Authorityの解説によると、後方車輪(バックジャイアント)は倒立から腹を下にして一回転する順手の技、前方車輪(フロントジャイアント)は逆手で行う技です。ここにひねりを加えると、後方車輪1回ひねりの「クワスト」、1回半ひねりの「リバルコ」へと発展します。

エンドー・アドラーといったイン・バー技は、この車輪の途中で体を鉄棒に近づけて回転する技であり、「車輪の親戚」と言えます。だからこそ、まとめて「車輪系技」と呼ばれることがあるのです。なお、鉄棒の規格(高さ約278cm、バー径2.8cmなど)はFIGの器械規格(Apparatus Norms)で定められています。

DスコアとEスコアの基本

鉄棒の得点は、演技価値点であるDスコア(難度)と、実施点であるEスコア(出来栄え)の合計で決まります。難度の高い8技+終末技がDスコアに算入され、各エレメントグループを満たすと0.5点(D難度以上)が加算されます。採点の全体像は採点規則(Code of Points)の基礎で詳しく解説しています。

なお、鉄棒を含む男子体操の演技構成や難度点を手軽に確認したい場合は、Gymnastics AI — Dスコア計算アプリが便利です。FIG 2025–2028採点規則に準拠し、790以上の技データベースを搭載しているため、エンドーやアドラーの難度もその場で確認できます。

エンドーとは|前方車輪からの浮腰回転技

エンドーとは|前方車輪からの浮腰回転技

まずは車輪系技の代表格、エンドーから見ていきましょう。エンドーはEG III(イン・バー技)に分類される基本技です。

エンドーの技術と動作

エンドー(Endo)は、前方車輪から入り、腰を鉄棒に近づけて開脚または閉脚でコンパクトに屈曲しながら回転し、倒立へ戻る技です。前掲のガイドでは、エンドーを「前方車輪から行うバスケットスイング(イン・バー技)」と説明しており、B難度と位置づけています。

回転中は肩角度と股関節の屈曲をコントロールし、鉄棒の真下を通過する際に体を圧縮するのが技術のポイントです。認定されるには、意図した方向へバーを越えて回転を継続する必要があります。

遠藤幸雄に由来する名称

「エンドー」という名称は、1960年代に活躍した日本の体操選手・遠藤幸雄に由来します。技名に選手名が冠されるのは、その選手が国際大会で初めて成功させ、採点規則に登録された証です。日本人の名を冠する技は鉄棒以外にも数多く存在し、日本体操界の歴史的貢献を示しています。

難度と採点上の扱い

エンドー単体はB難度ですが、ひねりを加えたり、終末技や離れ技につなげたりすることで演技全体の価値を高めます。イン・バー技は派手さこそ離れ技に劣りますが、演技の流れを作り、連続技(組み合わせ加点)の起点として重要な役割を果たします。実際の演技構成でDスコアがどう変わるか試したい方には、技を選んで並べるだけで難度点を自動計算できるGymnastics AIがおすすめです。

アドラーとは|ドイツ式車輪(ジャーマンジャイアント)

アドラーとは|ドイツ式車輪(ジャーマンジャイアント)

次に、エンドーと混同されやすいアドラーを解説します。アドラーもEG IIIに属しますが、動作の質はエンドーと大きく異なります。

アドラーの技術|ヒップダイスロケーション

アドラー(Adler)は、屈身したエンドーのように入りながら、腰を前上方へ突き上げ、肩関節を「ダイスロケーション(脱臼運動=肩の反り返し)」させて倒立へ抜ける技です。前掲のThe Gymnastics AuthorityはアドラーをC難度とし、EG IIIの中でもエンドー(B)・シュタルダー(B)より一段高い難度に位置づけています。ドイツ語圏では「ジャーマンジャイアント(ドイツ式車輪)」とも呼ばれます。

アドラーの技術的な核心は、肩の可動域を使って背面から倒立へ「反り抜ける」動作にあります。Gymnastics Coaching.comのジャーマンジャイアント解説でも、倒立到達の可否が評価に関わる点が指摘されています。

ひねりによる難度アップとグリップ変化

基本のアドラーは鷲づかみ(エルグリップ/背面握り)で終わりますが、倒立到達直前に「とび」局面を加えたり、ひねりを入れたりすると、グリップを変えながら難度がC→Dへと上がります。ひねりを伴うアドラーは、演技に多彩なグリップワークをもたらし、連続技の選択肢を広げます。

  • 基本アドラー:C難度、エルグリップで終了
  • アドラーひねり倒立:グリップ変化で難度アップ
  • とびを加えたアドラー:C→D難度に上昇

コステとの関係

アドラー系の技には、より複雑な「コステ(Koste)」などの派生技も存在します。前掲のGymnastics Coaching.comによれば、コステもC難度に位置づけられ、倒立に到達しない場合は無価値となる(ただし減点はない)といった採点上の扱いが明確化されています。イン・バー技は「倒立に立てるか」が価値の分かれ目になる点で共通しています。

マルケロフとは|前方系の離れ技

ここでエンドー・アドラーとは系統の異なる、マルケロフを取り上げます。マルケロフはEG II(離れ技)に属する、まったく別カテゴリーの技です。

マルケロフの動作と分類

マルケロフ(Markelov)は、鉄棒を一度手放し、開脚での前方系の飛越(ストラドル・ヘクト)を経てバーを再びつかむ離れ技です。名称は1977年にこの技を披露した旧ソ連のウラジミール・マルケロフに由来します。エンドーやアドラーが「バーに近い技(イン・バー)」であるのに対し、マルケロフは「バーから離れて空中局面を作る技」であり、根本的に性質が異なります。

ヤーガー(Jaeger)との関係

マルケロフは、前方系の離れ技である「ヤーガー(Jaeger)」の仲間として理解されます。Balance Beam Situationのスキルデータベースによると、開脚ヤーガーは前方サルトで手放して再握する離れ技で、女子段違い平行棒では最も人気の離れ技(D難度)とされています。マルケロフとヤーガーはともに前方への飛越という共通点を持ちますが、開始姿勢や飛越の形で区別されます。鉄棒の離れ技全般については鉄棒の離れ技|トカチェフ・コバチ・リバルコの違いで詳しく解説しています。

なぜ車輪系と混同されるのか

マルケロフがエンドー・アドラーと混同される理由は、いずれも「鉄棒で行う回転系の技」という大枠に見えるためです。しかし採点規則上は、マルケロフ=EG II(離れ技)、エンドー・アドラー=EG III(イン・バー技)と明確に区別されます。演技価値点を正しく把握するには、この分類の違いを理解することが不可欠です。実際にマルケロフやアドラーを組み込んだ演技のDスコアを試算したい方は、技を選ぶだけで難度・グループ加点・連続技ボーナスを自動計算できるGymnastics AIを使うと、分類の違いが得点にどう反映されるかを直感的に確認できます。

3つの技の違いを整理|グループ・難度・方向

ここまでの内容を、エンドー・アドラー・マルケロフの違いとして一覧に整理します。

エレメントグループの違い

最大の違いは所属グループです。エンドーとアドラーはEG III(イン・バー技)、マルケロフはEG II(離れ技)に属します。演技構成では、同じグループの技だけでは要件を満たせないため、各グループからバランスよく技を選ぶ必要があります。グループごとの役割は男子体操6種目の特性と必要な身体能力とあわせて理解すると立体的に見えてきます。

難度と方向の比較

技名

グループ

基本難度

回転方向・特徴

エンドー

EG III イン・バー

B

前方車輪から屈曲し倒立へ

シュタルダー

EG III イン・バー

B

後方車輪から開脚屈曲(エンドーの逆方向)

アドラー

EG III イン・バー

C

肩の反り返しで背面から倒立へ

マルケロフ

EG II 離れ技

離れ技系

バーを手放す前方飛越

補足すると、エンドーとシュタルダーは「前方車輪から」「後方車輪から」という入り方の違いで対をなす技です。閉脚版も存在しますが、鉄棒の下を通過する局面での下半身の動きに違いがあります。

混同しやすいポイント

  • エンドーとシュタルダー:方向(前方/後方)が逆。名前で覚えるより回転の入り方で区別する
  • エンドーとアドラー:どちらもイン・バーだが、アドラーは肩の脱臼運動で背面から抜ける点が異なる
  • アドラーとマルケロフ:アドラーはバーに近い技、マルケロフはバーを手放す離れ技でグループが違う

2025-2028年採点規則での変更点

これらの技の採点は、4年ごとに改訂される採点規則の影響を受けます。2025-2028年版での主な変更点を確認しておきましょう。

ひねり角度の減点緩和

MAGnasticsによる2025-2028年版の変更解説によると、混合握り(L字握り)の飛行系車輪やクワストなどでは、倒立到達時のひねり角度の減点しきい値が緩和されました。一方で、アドラーやシュタルダーといったイン・バー技は、従来どおり厳しめの基準が維持されています。イン・バー技は「きれいに倒立へ立てるか」がより厳格に評価される、と理解しておくとよいでしょう。

連続技(組み合わせ加点)の再編

同解説によれば、フライト同士(離れ技+離れ技)の連続技ボーナスは、従来の「C+C以上で0.1」が廃止され、D難度以上の技を求める方向へ再編されました。加えて、EG I(車輪)とEG III(イン・バー)の技を組み合わせる連続技の価値が拡大し、「リバルコ+ヤーガー」のような多彩なつなぎが評価されやすくなっています。演技構成の戦略は採点規則の理解と直結します。採点の仕組みについては体操競技の審判システム|Dパネル・Eパネルの役割もあわせてご覧ください。

離れ技の本数制限と難度上昇

離れ技には本数制限があり、ヤーガー・ギンガー・マルケロフ・前方サルト系はあわせて2本まで、トカチェフ系(ピアッティ含む)は2本、コバチ系も2本までと定められています。また、コバチ以外の離れ技は難度が引き上げられ、たとえばゲイロード1がD難度からE難度へと上昇しました。演技構成では、限られた本数の中でどの離れ技を選ぶかが戦略の要になります。

まとめ

鉄棒の車輪系技を軸に、エンドー・アドラー・マルケロフの違いを整理しました。要点は以下のとおりです。

  • 鉄棒の技は4つのエレメントグループに分類され、エンドー・アドラーはEG III(イン・バー技)、マルケロフはEG II(離れ技)に属する
  • エンドー(B難度)は前方車輪から、シュタルダー(B難度)は後方車輪から入る対の技
  • アドラー(C難度)は肩の脱臼運動で背面から倒立へ抜ける「ドイツ式車輪」
  • マルケロフはバーを手放す前方系の離れ技で、ヤーガーの仲間として理解される
  • 2025-2028年版では、ひねり角度の減点緩和、連続技の再編、離れ技の難度上昇が行われた

演技構成のDスコアを手軽にシミュレーションしたい方は、Gymnastics AIをぜひお試しください。技を選んで並べるだけで、難度点・グループ加点・連続技ボーナスを自動計算できます。iOS/Android対応で無料で使えます。

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岩﨑大翔
Author

岩﨑大翔 Daito Iwasaki

体操競技歴15年(全日本選手権出場)。音楽活動、AI駆動開発、体操の3つのフィールドで活動中。それぞれの専門知識と経験を活かして発信しています。

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